[ 解説 ]
・題名 … 登岳陽楼(がくようろうにのぼる)
・作者 … 杜甫(とほ)
・詩形 … 五言律詩
・押韻(おういん) … 楼、浮、舟、流
・対句 … 「昔聞洞庭水」と「今上岳陽楼」
「呉楚東南坼」と「乾坤日夜浮」
「親朋無一字」と「老病有孤舟」
・主題 … 岳陽楼からの雄大な眺望を前にして、身の不幸と戦争が続くことを嘆いている。
[ 現代語訳・書き下し文・原文 ]
登岳陽楼
岳陽楼に登る
岳陽楼に登る
昔聞洞庭水
昔聞く洞庭の水
昔から洞庭湖について聞き知っていたが、
今上岳陽楼
今上る岳陽楼
今、岳陽楼に登った。
呉楚東南坼
呉楚東南に坼け
呉と楚の地が東と南に分けられ、
・坼(さ)く … 分かれる
乾坤日夜浮
乾坤日夜浮かぶ
天と地が昼も夜もその上に影を浮かべている。
・乾坤(けんこん) … 天と地
親朋無一字
親朋一字無く
親戚や友人からは一字の便りもなく、
・親朋(しんぽう) … 親戚や友人
・一字無し … 一字の便りもない
老病有孤舟
老病孤舟有り
老いて病気がちなわが身には一そうの小舟があるだけだ。
・老病 … 年老いて病気がちなわが身
・孤舟(こしゅう) … 一そうの小舟
戎馬関山北
戎馬関山の北
関所のある国境の山々の北では戦乱の状態が続いている。
・戎馬(じゅうば) … 軍馬 ⇒ 戦乱
・関山(かんざん) … 関所のある国境の山々
憑軒涕泗流
軒に憑りて涕泗流る
てすりにもたれていると、涙が流れてくる。
・軒(けん)に憑(よ)る … てすりにもたれる
・涕泗(ていし) … 涙
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