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[ 現代語訳・品詞分解・原文 ]
中将、人々引き具して帰り参りて、かぐや姫を、
中将(ちゅうじょう)
中将は、人々を引き連れて帰って参って、かぐや姫を、
・ 引き具し … サ行変格活用の動詞「引き具す」の連用形
・ 帰り参り … ラ行四段活用の動詞「帰り参る」の連用形
○ 帰り参る … 「帰り来」の謙譲語
え戦ひとめずなりぬること、こまごまと奏す。
戦い留めることができずに終わったことを、詳しく奏上する。
☆ え(〜打消) … 〜できない
・ 戦ひとめ … マ行下二段活用の動詞「戦ひとむ」の未然形
・ ず … 打消の助動詞「ず」の連用形
・ なり … ラ行四段活用の動詞「なる」の連用形
・ ぬる … 完了の助動詞「ぬ」の連体形
・ 奏す … サ行変格活用の動詞「奏す」の終止形
☆ 奏す … (天皇や上皇に)申し上げる
薬の壺に、御文添へて参らす。
御文(おおんふみ)
薬の壺にお手紙を添えて差し上げる。
・ 添へ … ハ行下二段活用の動詞「添ふ」の連用形
・ 参らす … サ行下二段活用の動詞「参らす」の終止形
○ 参らす … 差し上げる
広げて御覧じて、いとあはれがらせ給ひて、
給(たま)ひ
広げて御覧になって、とてもしみじみと感動なさって、
・ 広げ … ガ行下二段活用の動詞「広ぐ」の連用形
・ 御覧じ … サ行変格活用の動詞「御覧ず」の連用形
・ あはれがら … ラ行四段活用の動詞「あはれがる」の未然形
○ あはれがる … しみじみと感動する
・ せ … 尊敬の助動詞「す」の連用形
・ 給ひ … ハ行四段活用の尊敬の補助動詞「給ふ」の連用形
物も聞こし召さず、
お食事も召し上がらず、
・ 聞こし召さ … サ行四段活用の動詞「聞こし召す」の未然形
☆ 聞こし召す … 「食ふ」の尊敬語
・ ず … 打消の助動詞「ず」の連用形
物も聞こし召さず、御遊びなどもなかりけり。
お食事も召し上がらず、管弦のお遊びなどもなさらなくなった。
大臣、上達部を召して、「いづれの山か天に近き。」と問はせ給ふに、
大臣や公卿をお召しになって、「どの山が天に近いか。」とお尋ねになると、
ある人奏す、「駿河国にあるなる山なむ、
その場にいた人が奏上するには、「駿河の国にあるという山が、
この都も近く、天も近く侍る。」と奏す。
この都にも近く、天にも近うございます。」と奏上する。
これを聞かせ給ひて、
これをお聞きになって、
あふこともなみだに浮かぶわが身には
かぐや姫に会うこともないので、涙にひたるわが身にとって、
死なぬ薬も何にかはせむ
不死の薬が何になろうか、何にもならない。
かの奉る不死の薬壺に文具して、御使ひに賜はす。
あの差し上げた不死の薬の壷に手紙を添えて、お使いにお与えになる。
勅使には、調石笠といふ人を召して、駿河国にあなる山の頂に、
勅使には、調石笠という人をお召しになって、駿河の国にあるという山の頂上に、
持てつくべきよし仰せ給ふ。
持ち運ばなければならないという旨をお命じになる。
峰にてすべきやう教へさせ給ふ。
頂上でなすべき方法をお教えになる。
御文、不死の薬の壺並べて、
お手紙と不死の薬と壺を並べて、
火をつけて燃やすべきよし仰せ給ふ。
火をつけて燃やさなければならないという旨をお命じになる。
そのよし承りて、士どもあまた具して山へ登りけるよりなむ、
その旨を承って、兵士たちを大勢引き連れて山へ登ったことから、
その山を富士の山とは名付けける。
その山を富士の山と名づけたのだった。
その煙、いまだ雲の中へ立ち上るとぞ、言ひ伝へたる。
その煙は、今でも雲の中へ立ち昇っている、と言い伝えている。
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