人に忍びざるの心


・ 「人に忍びざるの心」とは「人の不幸を見過ごしにできない心、思いやりの心」を意味します。

・ 縦書き、全漢字に読み、ひらがな

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 [ 現代語訳・書き下し文1 ]

不忍人之心・孟子 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 人に忍びざるの心 … 思いやりの心

・ 斯に … そこで

・ 掌上に運らす … 自由にあやつる


 [ 現代語訳・書き下し文2 ]

不忍人之心・孟子 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 所以〜者 … 〜する理由は

   読み「〜ゆえんのものは」

・ 今 … かりに今

・ 乍ち … 不意に

・ 孺子 … 幼児

・ 将〜 … いまにも〜する

   読み「まさに〜す」(再読文字)

・ 怵惕 … 恐れ危ぶむこと

・ 惻隠 … かわいそうに思うこと

・ 内る … 結ぶ

・ 誉 … よいという評判、名誉

・ 郷党 … 郷里を同じくする仲間

・ 朋友 … 友人


 [ 現代語訳・書き下し文3 ]      [ 語句・句法 ]

不忍人之心・孟子 現代語訳・書き下し文・読み


・ 其声 ⇒ 幼児を見殺しにしたという評判

・ 悪む … 自分に不利益なものとして嫌う

・ 然する … そのようにする

・ 由是観之 … 以上のことから考えて

・ 羞悪 … 自分や他人の不善を恥じ憎む

・ 辞譲 … 遠慮して他人に譲る

・ 是非 … 物事の善悪を判断する




 [ 現代語訳・書き下し文4 ]

不忍人之心・孟子 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 端 … 物事の初めの部分、糸口

・ 猶〜 … ちょうど〜と同じである

   読み「なほ〜ごとし」(再読文字)

・ 四体 … 四肢、両手両足


 [ 現代語訳・書き下し文5 ]

不忍人之心・孟子 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 能はず ⇒ 仁義礼智を実行できない

・ 賊ふ … 害する、傷つける

・ 凡そ … そもそも、一般に


 [ 現代語訳・書き下し文6 ]

不忍人之心・孟子 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 四海 … 四方の海、天下

・ 保つ … ある状態を維持する

・ 事ふ … 目上の人に奉仕する




     [ 原文 ]

孟子曰、「人皆有不忍人之心。

先王有不忍人之心、斯有不忍人之政。

以不忍人之心、行不忍人之政、治天下可運之掌上。

所以謂人皆有不忍之心者、今人乍見孺子将入於井、皆有怵惕惻隠之心。

非所以内交於孺子之父母也。

非所以要誉於郷党朋友也。

非悪其声而然也。

由是観之、無惻隠之心、非人也。

無羞悪之心、非人也。

無辞讓之心、非人也。

無是非之心、非人也。

惻隠之心、仁之端也。

羞悪之心、義之端也。

辞讓之心、礼之端也。

是非之心、智之端也。

人之有是四端也、猶其有四体也。

有是四端而自謂不能者、自賊者也。

謂其君不能者、賊其君者也。

凡有四端於我者、知皆拡而充之矣。

若火之始然、泉之始逹。

苟能充之、足以保四海、苟不充之、不足事父母。」


     [ 現代語訳 ]

孟子が言った、「人には皆思いやりの心がある。

古代の聖王には思いやりの心があったので、そこで思いやりのある政治が行なわれた。

思いやりの心に基づき、思いやりのある政治を行えば、天下を治めることは手のひらの上で物を転がすように簡単にできる。

人には皆思いやりの心があるという理由は、今もし人が不意に幼児が井戸に落ち込もうとしているのを見たら、皆はっと驚きかわいそうに思う気持ちが生じる。

交際を幼児の父母に求めようとする理由からではない。

名誉を村の人々や友人に求めようとする理由からでもない。

悪い評判を嫌ってそうするのでもない。

以上のことから考えると、かわいそうに思う心がない者は、人ではない。

自分の不善を恥じ他人の不善を憎む心がない者は、人ではない。

遠慮して他人に譲る心がない者は、人ではない。

善悪を判断する心がない者は、人ではない。

かわいそうに思う心は、仁の糸口である。

自分の不善を恥じ他人の不善を憎む心は、義の糸口である。

遠慮して他人に譲る心は、礼の糸口である。

善悪を判断する心は、智の糸口である。

人にこの四つの糸口があるのは、ちょうど人に両手両足があるのと同じである。

この四つの糸口があって、自分は実行できないという者は、自分自身を傷つける者である。

その君主は実行できないという者は、その君主を傷つける者である。

一般に自分に四つの糸口がある者は、誰でもそれを拡大し充実させることを悟るはずである。

火が燃え始め、泉の水が涌き出すのと同様である。

もしもこれを拡充することができれば、天下を安定させることができ、もしもこれを拡充しなければ、父母に奉仕することもできない。」と。




     [ 書き下し文 ]

孟子曰はく、「人皆人に忍びざるの心有り。

先王人に忍びざるの心有りて、斯に人に忍びざるの政有り。

人に忍びざるの心を以て、人に忍びざるの政を行はば、天下を治むること之を掌上に運らすべし。

人皆人に忍びざるの心有りと謂ふ所以の者は、今人乍ち孺子の将に井に入らんとするを見れば、皆怵惕惻隠の心有り。

交はりを孺子の父母に内るる所以に非ざるなり。

誉を郷党朋友に要むる所以に非ざるなり。

其の声を悪みて然するに非ざるなり。

是に由りて之を観れば、惻隠の心無きは、人に非ざるなり。

羞悪の心無きは、人に非ざるなり。

辞譲の心無きは、人に非ざるなり。

是非の心無きは、人に非ざるなり。

惻隠の心は、仁の端なり。

羞悪の心は、義の端なり。

辞譲の心は、礼の端なり。

是非の心は、智の端なり。

人の是の四端有るや、猶ほ其の四体有るがごときなり。

是の四端有りて、自ら能はずと謂ふ者は、自ら賊ふ者なり。

其の君能はずと謂ふ者は、其の君を賊ふ者なり。

凡そ我に四端有る者は、皆拡めて之を充たすを知る。

火の始めて然え、泉の始めて逹するがごとし。

苟しくも能く之を充たさば、以て四海を保つに足り、苟しくも之を充たさずんば、以て父母に事ふるに足らず。」と。






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