天道是か、非か

・ 縦書き、全漢字に読みつき、ひらがな

HOME(漢文記事一覧)





 [ 現代語訳・書き下し文1 ]

天道是か非か・史記 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 親 … 特にひいきする者

・ 与す … 助ける

・ 〜邪 … 〜か

   読み「〜か」(疑問)


 [ 現代語訳・書き下し文2 ]

天道是か非か・史記 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 薦む … 選んで取り上げる

・ 空し … 尽きる

・ 糟糠 … 粗末な食事

・ 厭く … 十分に満足する

・ 蚤夭す … 早死にする

・ 報施す … 恩恵を施す

・ 何如 … どのような

・ 哉 … 〜か

   読み「〜や」(疑問)


 [ 現代語訳・書き下し文3 ]

天道是か非か・史記 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 不辜 … 罪のない人

・ 肝 … なます

・ 暴戻 … 乱暴で道理に反する行為をする

・ 恣睢 … 勝手気ままに振舞う

・ 党 … 仲間

・ 横行す … 勝手きままに振舞う

・ 遵ふ … 道理や法則に従う

・ 哉 … 〜か

   読み「〜や」(疑問)

・ 其の ⇒ 「常に善人に与す」とは言えないことの

・ 彰明較著 … 極めて明白である


 [ 現代語訳・書き下し文4 ]

天道是か非か・史記 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 操行 … 平素の行い

・ 不軌 … 法規に従わないこと

・ 専ら … ひたすら

・ 忌諱 … 嫌って避けること

・ 逸楽 … 気ままに遊び楽しむこと

・ 富厚 … 富んで豊かであること

・ 累世 … 世代を重ねること

・ 或いは … 一方では

・ 行くに径に由らず … 公明正大であり常に大道を進む


 [ 現代語訳・書き下し文5 ]

天道是か非か・史記 現代語訳・書き下し文

     [ 語句・句法 ]

・ 憤りを発す … 気持ちを奮い立たせる

・ 禍災 … 災難

・ 勝ふ … することができる

・ 〜邪 … 〜か

   読み「〜か」(疑問)




     [ 原文 ]

或曰「天道無親。常与善人。」

若伯夷・叔斉、可謂善人者、非邪。

積仁絜行如此而餓死。

且七十子之徒、仲尼独薦顏淵為好学。

然回也屢空、糟糠不厭、而卒蚤夭。

天之報施善人其何如哉。

盗蹠日殺不辜、肝人之肉、暴戻恣睢、

聚党数千人、横行天下、竟以寿終。

是遵何徳哉。此其尤大彰明較著者也。

若至近世、操行不軌、専犯忌諱、

而終身逸楽富厚、累世不絶、

或択地而蹈之、時然後出言、行不由径、

非公正不発憤、而遇禍災者、不可勝数也。

余甚惑焉。儻所謂天道、是邪非邪。




    [ 現代語訳 ]

ある人が言うには、「天道はえこひいきしない。いつでも善人の味方である。」と。

伯夷・叔斉のような人は、善人というべき者か、そうでないか。

仁徳を積んで行いを清らかにすることがこのようであるのに餓死してしまった。

また、七十人の弟子の中で、仲尼はただ顔淵だけを選んで学問を好む者として取り上げた。

しかしながら回はしばしば食料が欠乏した。

粗末な食事さえ満足に取らないで、結局若死にしてしまった。

天が善人に恩恵を施すということは、そもそもどのようなことなのか。

盜蹠は毎日罪のない人を殺し、人の肉をなますにし、道理に反して乱暴で勝手気ままにふるまい、数千人の仲間を集めて、世の中で思いのままに行動したが、結局天寿を全うして死んだ。

これは何の徳によるものだろうか。

これはその最も際立って明白な事例である。

近世になっても、素行が悪く法規に従わず、ひたすら人として嫌い避けるべきことを行なっても、一生遊び楽しみ裕福であり、何代も子孫が絶えない、

一方では、慎重に行動を起こし、時期を見計らって発言し、公明正大であって常に大道を進み、公正な場合にだけ気持ちを奮い立たせても、災難に遭うような者は、数え上げることができないほどである。

私は非常に戸惑ってしまう。

はたして世の中でいう天道というものは正しいのか、正しくないのか。




    [ 書き下し文 ]

或ひと曰はく、「天道に親無し。常に善人に与す。」と。

伯夷・叔斉の若きは、善人と謂ふべき者か、非か。

仁を積み行ひを絜くすること此くのごとくにして餓死せり。

且つ七十子の徒、仲尼は独り顏淵を薦めて学を好むと為す。

然れども回や屢空し。

糟糠すら厭かずして、卒に蚤夭せり。

天の善人に報施すること、其れ何如ぞや。

盗蹠は日に不辜を殺し、人の肉を肝にし、暴戻恣睢、党を聚むること数千人、天下に横行するも、竟に寿を以て終はる。是れ何の徳に遵ふや。此れ其の尤も大いに彰明較著なる者なり。

近世に至り、操行不軌、専ら忌諱を犯すも、終身逸楽富厚、累世絶えず、

或いは地を択びてこれを踏み、時ありて然る後に言を出だし、行くに径に由らず、公正に非ずんば憤を発せざるも、禍災に遇ふがごとき者は、数ふるに勝ふべからざるなり。

余甚だ惑へり。

儻いは所謂天道是か、非か。






Copyright プロ家庭教師タカシ All Rights Reserved