戦ひ朝廷に勝てり


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 [ 現代語訳・書き下し文1 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 昳麗なり … 容姿が美しいさま

・ 朝服衣冠す … 朝廷に出仕する時の正式な服装を整える

・ 城北 … 城の北側

・ 孰与A〜 … Aとどちらが〜か

  読み「Aノ〜ニいづレゾ」(比較)

・ 何〜也 … どうして〜か、〜ない

  読み「なんゾ〜や」(反語)


 [ 現代語訳・書き下し文2 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 美麗なり … 美しくあでやかなさま

・ 復た … さらに

・ 妾 … 側室


 [ 現代語訳・書き下し文3 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 旦日 … 翌日

・ 与A孰〜 … Aとどちらが〜か

  読み「Aといづレカ〜」(比較)

・ 不若〜 … 〜に及ばない(比較)

・ 孰視す … じっと見つめる

・ 不如〜 … 〜に及ばない(比較)


 [ 現代語訳・書き下し文4 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 私する … 身びいきする


 [ 現代語訳・書き下し文5 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 是に於いて … そこで

・ 入朝す … 朝廷に出仕する


 [ 現代語訳・書き下し文6 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 方千里 … 千里四方

・ 城 … 城郭に囲まれた町


 [ 現代語訳・書き下し文7 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 宮婦 … 宮仕えの女性

・ 左右 … 側近の者たち

・ 四境 … 四方の国境


 [ 現代語訳・書き下し文8 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 乃ち … そこで

・ 群臣 … 多くの臣下

・ 吏民 … 官吏と人民

・ 面ゆ … 面会する

・ 刺る … 悪く言う

・ 上書す … 主君に意見書を奉る


 [ 現代語訳・書き下し文9 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 謗譏す … そしる

・ 市朝 … 町中などの公の場

・ 市の若し … まるで市場のように多くの人がいる


 [ 現代語訳・書き下し文10 ]

戦勝於朝廷・戦国策 現代語訳・書き下し文・読み


     [ 語句・句法 ]

・ 時時にして間に進む … 時折進言する者がいるくらいである

・ 期年 … 一年

・ 朝す … 王に謁見する

・ 所謂 … 世間でいう




    [ 原文 ]

鄒忌修八尺有余、身体昳麗。

朝服衣冠窺鏡、謂其妻曰、「我孰与城北徐公美。」

其妻曰、「君美甚。徐公何能及君也。」

城北徐公、斉国之美麗者也。

忌不自信、而復問其妾曰、「吾孰与徐公美。」

妾曰、「徐公何能及君也。」

旦日客従外来、与坐談。

問之客曰、「吾与徐公孰美。」

客曰。「徐公不若君之美也。」

明日徐公来。孰視之、自以為不如。

窺鏡而自視、又弗如遠甚。

暮寝而思之曰、「吾妻之美我者、私我也。

妾之美我者、畏我也。

客之美我者、欲有求於我也。」

於是入朝見威王曰、「臣誠知不如徐公美。

臣之妻私臣、臣之妾畏臣、

臣之客欲有求於臣、皆以美於徐公。

今斉地方千里、百二十城。

宮婦・左右。

莫不私王、朝廷之臣、莫不畏王、

四境之内、莫不有求於王。

由此観之、王之蔽甚矣。」

王曰、「善。」

乃下令。「群臣・吏民能面刺寡人之過者、受上賞。

上書諫寡人者、受中賞。

能謗#35663;於市朝、聞寡人之耳者、受下賞。」

令初下。群臣進諫、門庭若市。

数月之後、時時而間進、期年之後、雖欲言、無可進者。

燕・趙・韓・魏、聞之皆朝於斉。

此所謂戦勝於朝廷。




    [ 現代語訳 ]

鄒忌は、身長が八尺余りであり、容姿が美しかった。

朝廷に出仕する時の正式な服装を整えて鏡をのぞき、その妻に対して言うには、「私と城北の徐公とでは、どちらが美しいだろうか。」と。

その妻が言うには、「あなたの美しさは際立っています。徐公がどうしてあなたに及びましょうか。」と。

城の北側にいる徐公は、斉の国の中でも美しくあでやかな人だった。

鄒忌が、自分で信じないで、さらに、その側室に尋ねて言うには、「私と徐公とでは、どちらが美しいだろうか。」と。

側室が言うには、「徐公がどうしてあなたに及びましょうか。」と。

あくる日、客が訪ねてきて、一緒に座って会話した。

これに尋ねて言うには、「私と徐公とでは、どちらが美しいだろうか。」と。

客が言うには、「徐公は、あなたの美しさには及びません。」と。

翌日、徐公がやって来た。これをじっと見つめて、自分で及ばないと思った。

鏡をのぞいて自分の姿を見たところ、美しさに劣ることが非常にはなはだしかった。

夕暮れに寝てこれを思って言うには、「自分の妻が私のほうが美しいとするのは、私をえこひいきするからだ。

側室が私のほうが美しいとするのは、私を恐れているからだ。

客が私のほうが美しいとするのは、私に何か求めようとすることがあるからだ。」と。

そこで朝廷に出仕して、威王にお目にかかって言うには、「私は本当に徐公の美しさに及ばないのをわかっています。

私の妻は私をえこひいきし、私の側室は私を恐れ、私の客は私に何か求めようとすることがあり、皆それで徐公よりも美しいとします。

現在、斉国は千里四方の広さであり、百二十の城郭に囲まれた町があります。

宮仕えの女性や側近の者たちは、みな王をえこひいきしていて、朝廷の大臣たちは、みな王を恐れており、国内の人民は、みな王に何かを求めています。

これらのことから考えると、王は、はなはだしく覆い隠されています。」と。

王が言うには、「わかった。」と。

そこで命令を下した。

「多くの臣下、官吏や人民で、面と向かって私の過失を取り上げて悪く言えた者は、上級のほうびを受け取るだろう。

文を奉って私に過ちを正すように忠告した者は、中級のほうびを受け取るだろう。

町中などの公の場で私をそしって、私の耳に聞こえさせることができた者は、下級のほうびを受け取るだろう。」 と。

多くの臣下が進言し忠告して、宮廷の門や広場には多くの人が集まって、まるで市場のようだった。

数か月後、時折進言する者がいるくらいで、一年後、進言しようと思っても、進言するべきことがなくなった。

燕の国も、趙の国も、韓の国も、魏の国も、これを聞いて斉の国王に謁見した。

これが、世間でいう、戦いに朝廷に居ながらにして勝つということである。


    [ 書き下し文 ]

鄒忌修八尺有余にして、身体昳麗なり。

朝服衣冠して鏡を窺ひ、其の妻に謂ひて曰はく、「我城北の徐公の美に孰与れぞ。」と。

其の妻曰はく、「君の美なること甚し。徐公何ぞ能く君に及ばんや。」と。

城北の徐公は、斉国の美麗なる者なり。

忌自ら信ぜずして、復た其の妾に問ひて曰はく、「吾徐公の美に孰与れぞ。」と。

妾曰はく、「徐公何ぞ能く君に及ばんや。」と。

旦日客外より来たり、与に坐談す。

之に問ひて曰はく、「吾と徐公と孰れか美なる。」と。

客曰はく、「徐公は君の美なるに若かず。」と。

明日徐公来たる。

之を孰視し、自ら以為へらく如かずと。

鏡を窺ひて自ら視るに、又如かざること遠く甚だし。

暮れに寝ねて之を思ひて曰はく、「吾が妻の我を美とするは、我に私すればなり。

妾の我を美とするは、我を畏るればなり。

客の我を美とするは、我に求むる有らんと欲すればなり。」と。

是に於いて入朝して、威王に見えて曰はく、「臣は誠に徐公の美に如かざるを知れり。

臣の妻は臣に私し、臣の妾は臣を畏れ、臣の客は臣に求むる有らんと欲し、皆以て徐公よりも美なりとす。

今斉の地方千里、百二十城あり。

宮婦・左右は、王に私せざる莫く、朝廷の臣は、王を畏れざる莫く、四境の内は、王に求むる有らざる莫し。

此れに由りて之を観るに、王の蔽はるること甚だし。」と。

王曰はく、「善し。」と。

乃ち令を下す。

「群臣・吏民の能く面みてに寡人の過ちを刺る者は、上賞を受けん。

上書して寡人を諌むる者は、中賞を受けん。

能く市朝に謗譏して、寡人の耳に聞こえしむる者は、下賞を受けん。」と。

令初めて下る。群臣進み諫めて、門庭市の若し。

数月の後、時時にして間に進み、期年の後、言はんと欲すと雖も、進むべき者無し。

燕・趙・韓・魏、之を聞きて皆斉に朝す。

此れ所謂戦ひ朝廷に勝てるなり。






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