款冬一枝

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 [ 現代語訳・書き下し文1 ]

款冬一枝・飯田黙叟 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 年弱 … 年令の若いこと

・ 誇る … 自慢する

・ 驕る … 思い上がる

・ 旦暮 … 朝晩

・ 畋猟す … 狩りをする

・ 健 … 強く勇ましいこと

・ 殪す … 射殺する

・ 挫く … へし折る

・ 弊廬 … あばらや

・ 乞ふ … 求める


 [ 現代語訳・書き下し文2 ]

款冬一枝・飯田黙叟 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 須臾 … しばらくの間

・ 出だす … 表に出す

・ 視す … 見せる

・ 懌ぶ … よろこぶ

・ 状 … なりゆき

・ 臣 … 家来

・ 士 … 役人

・ 判ず … 判断する


 [ 現代語訳・書き下し文3 ]

款冬一枝・飯田黙叟 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 慚 … 恥ずかしいと思うこと

・ 悔 … 残念に思うこと

・ 奥旨 … 芸能の奥深くにある意味

・ 得 … 理解する


    [ 原文 ]

 初、道灌年弱、誇勇驕武。

 旦暮畋猟山野、殪健鳥、挫猛獣。

 未嘗通人情。或日狩金沢山。

 会驟雨、過六浦訪一弊廬、乞蓑。

 莫応。

 須臾一少女出視款冬一枝、唯微笑而已。

 道灌不解意、弗懌而帰。

 告状臣士。

 有老士、判曰、「無蓑。」

 問其故。


 対曰、「奈奈返耶返、波那半佐久止母、

 也麻布伎乃、美乃比登津駄仁、

 難幾曽加南之支。」

 道灌大慚悔、初学和歌、遂得奥旨云。


    [ 現代語訳 ]

初め、道灌は、年少なのに、勇気を自慢し武術で思い上がっていた。

朝も晩も山野で狩りをし、猛鳥を射殺し、猛獣を打ち倒した。

それまで一度も人情を理解したことがなかった。

ある日金沢の山で狩りをした。

にわか雨に遇い、六浦を過ぎ、一軒のあばらやを訪ねて、蓑を求めた。

応答はなかった。

しばらくして一人の少女が山吹の枝一本を持って来て見せ、ただ微笑しているだけだった。

道灌は意味がわからず、不愉快に思って帰った。

なりゆきを家来に話した。

年老いた家来がいた、解釈して言うには、「蓑がないだけです。」と。

その理由を尋ねた。

お答えして言うには、「七重八重、花は咲くとも、山吹の、実の一つだに、なきぞ悲しき。」と。

道灌はたいそう恥じて反省し、初めて和歌を学び、とうとう奥深い意味を理解したということだ。


    [ 書き下し文 ]

初め、道灌年弱にして、勇に誇り武に驕る。

旦暮に山野に畋猟し、健鳥を殪し、猛獣を挫く。

未だ嘗て人情に通ぜず。

或る日金沢の山に狩りす。

驟雨に会ひ、六浦を過ぎ一弊廬を訪ひて、蓑を乞ふ。

応ふる莫し。

須臾にして一少女款冬一枝を出だし視し、唯だ微笑するのみ。

道灌意を解せず、懌ばずして帰る。

状を臣士に告ぐ。老士有り、判じて曰はく、「蓑無きのみ。」と。

其の故を問ふ。

対へて曰はく、「奈奈返耶返、波那半佐久止母、也麻布伎乃、

美乃比登津駄仁、難幾曽加南之支。」と。

道灌大いに慚悔し、初めて和歌を学び、遂に奥旨を得たりと云ふ。






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