梓弓


・ 伊勢物語「梓弓」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

梓弓・伊勢物語 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

昔、男、片田舎に住みけり。
昔、男が、片田舎に住んでいた。
・ 住み … マ行四段活用の動詞「住む」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

男、宮仕へしにとて、別れ惜しみて行きにけるままに、
男は、宮仕えをするためにと言って、別れを惜しんで行ってしまったままで、
○ 宮仕へ … 宮中や貴人のもとに仕えること
・ し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・ 惜しみ … マ行四段活用の動詞「惜しむ」の連用形
・ 行き … カ行四段活用の動詞「行く」の連用形
・ に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

三年来ざりければ、待ちわびたりけるに、
三年(みとせ)、来(こ)ざり
三年も帰ってこなかったので、待ちくたびれていたが、
・ 来 … カ行変格活用の動詞「来(く)」の未然形
・ ざり … 打消の助動詞「ず」の連用形
・ けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ 待ちわび … バ行上二段活用の動詞「待ちわぶ」の連用形
○ わぶ(補助動詞) … 〜しづらい
・ たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形


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いとねむごろに言ひける人に、
たいそう熱心に言い寄ってきた人に、

「今宵あはむ。」と契りたりけるに、この男来たりけり。
「今夜結婚しよう。」と約束していたときに、この男が帰って来た。

「この戸開けたまへ。」とたたきけれど、開けで、
「この戸を開けてください。」とたたいたけれども、開けないで、

歌をなむ詠みて出だしたりける。
歌を詠んで差し出した。

  あらたまの年の三年を待ちわびて
  あなたを三年もの間つらい気持ちで待ち続けて、

  ただ今宵こそ新枕すれ
  ちょうど今夜、ほかの人と結婚するのです。

と言ひ出だしたりければ、
と詠んで差し出したので、

  あづさ弓ま弓槻弓年を経て
  長年の間、私があなたを愛したように、

  わがせしがごとうるはしみせよ
  あなたも新しい夫を愛してあげなさい。

と言ひて、いなむとしければ、女、
と詠んで、立ち去ろうとしたので、女は、

  あづさ弓引けど引かねど
  ほかの男が私の気を引いても引かなくっても、

  昔より心は君に寄りにしものを
  昔から私の心はあなたに傾いていたのになあ。

と言ひけれど、男帰りにけり。
と詠んだけれども、男は帰ってしまった。

女、いと悲しくて、後に立ちて追ひ行けど、
女は、たいそう悲しくて、後ろについて追って行ったけれども、

え追ひつかで、清水のある所に伏しにけり。
追いつくことができないで、清水のある所に倒れ伏してしまった。

そこなりける岩に、指の血して書きつけける。
そこにあった岩に、指の血で書きつけた。

  あひ思はで離れぬる人を
  思っているのに思ってくれないで疎遠になってしまった人を

  とどめかねわが身は今ぞ消えはてぬめる
  引き止めることができなくて、私の身は今にも消えてしまいそうです。

と書きて、そこにいたづらになりにけり。
と書いて、そこで死んでしまった。






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