筒井筒


・ 伊勢物語「筒井筒」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

筒井筒・伊勢物語 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとに出でて遊びけるを、
昔、田舎暮らしをしていた人の子供たちが、井戸の周りに出て遊んでいたが、
・ し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・ 出で … ダ行下二段活用の動詞「出づ」の連用形
・ 遊び … バ行四段活用の動詞「遊ぶ」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、
年頃になったので、男も女も互いに恥ずかしがっていたけれども、
・ なり … ラ行四段活用の動詞「なる」の連用形
・ に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・ けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形
・ 恥ぢかはし … サ行四段活用の動詞「恥ぢかはす」の連用形
・ あり … ラ行変格活用の補助動詞「あり」の連用形
・ けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形

男はこの女をこそ得めと思ふ。
男はこの女をぜひ妻にしようと思う。
○ こそ(係助詞・強調) ⇒ 結び:め(已然形)
・ 得 … ア行下二段活用の動詞「得(う)」の未然形
・ め … 意志の助動詞「む」の已然形
・ 思ふ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の終止形


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女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。
女はこの男をと思い、親が結婚させようとしても、聞き入れないでいた。

さて、この隣の男のもとより、かくなむ、
そうして、この隣の男のもとから、このように、

  筒井筒井筒にかけしまろがたけ
  筒井の井筒と測り比べた私の背丈も

  過ぎにけらしな妹見ざるまに
  井筒の高さを越えたようですよ、あなたに会わないでいるうちに。

女、返し、
女の返歌、

  くらべこし振り分け髪も肩過ぎぬ
  比べ合ってきた振り分け髪も肩を過ぎてしまいました。

  君ならずしてたれか上ぐべき
  あなたでなくて誰のために髪を上げましょうか。

など言ひ言ひて、つひに本意のごとくあひにけり。
などと詠み合って、とうとう本来の望みどおりに結婚した。

さて、年ごろ経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、
そして、数年たつうちに、女は、親が死んで、頼れるものがなくなったので、

もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、
いっしょに貧しい暮らしを続けていられようかと思って、

河内の国、高安の郡に、行き通ふ所出で来にけり。
河内の国、高安の郡に、通って行く所ができてしまった。

さりけれど、このもとの女、悪しと思へる気色もなくて、
そうであったが、このもとの女は、不快に思っている様子もなくて、

出だしやりければ、男、異心ありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、
送り出してやったので、男は、浮気心があってこうなのだろうかと思い疑って、

前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、
庭の植え込みの中に隠れていて、河内へ行くふりをして見ていると、

この女、いとよう化粧じて、うちながめて、
この女は、とても念入りに化粧して、もの思いにふけりながらぼんやり眺めて、

  風吹けば沖つ白波たつた山
  風が吹くと沖の白波が立つ、そのような名の竜田山を、

  夜半にや君がひとり越ゆらむ
  この夜中に、あなたは一人で越えて行くのでしょうか。

と詠みけるを聞きて、
と詠んだのを聞いて、

限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。
この上なくいとしいと思って、河内へも行かなくなってしまった。

まれまれかの高安に来てみれば、
たまたま、あの高安にやって来て見ていると、

初めこそ心にくくもつくりけれ、
初めは奥ゆかしく取りつくろっていたが、

今はうちとけて、手づから飯匙取りて、
今では気を許して、自分の手でしゃもじを取って、

笥子の器物に盛りけるを見て、心憂がりて行かずなりにけり。
飯を盛る器に盛っていたのを見て、いや気がさして行かなくなってしまった。

さりければ、かの女、大和の方を見やりて、
そういうことだったので、あの女は、大和の方を遠く眺めて、

  君があたり見つつををらむ
  あなたのいらっしゃる辺りを眺め眺めおりましょう。

  生駒山雲な隠しそ雨は降るとも
  生駒山よ、雲を隠さないでおくれ。たとえ雨は降っても。

と言ひて見出だすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。
と詠んで外のほうを見ると、やっと、大和の人が、「行こう。」と言った。

喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
喜んで待つが、そのたびごとに過ぎてしまったので、

  君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば
  あなたが来ようと言った夜が、そのたびごとに過ぎてしまったので、

  頼まぬものの恋ひつつぞ経る
  あてにはしていないけれども、恋しく思いながら過ごしています。

と言ひけれど、男住まずなりにけり。
と詠んだけれども、男は通って行かなくなってしまった。






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