木曽の最期「木曽は長坂を経て」


HOME(古文記事一覧)



   下の画像クリックで次の画像に進みます。

      [ 現代語訳・品詞分解・読み ]


       [ 現代語訳・原文・語句 ]

木曽は長坂を経て、丹波路へおもむくとも聞こえけり。
木曽は長坂を通って、丹波国方面へ向かうとも言われていた。
・ おもむく … 向かって行く
・ 聞こゆ … うわさになる

また、竜花越にかかって北国へとも聞こえけり。
また、竜花越えをして北国へ向かうとも言われていた。
・ かかる … 通りかかる

かかりしかども、今井が行方を聞かばやとて、
このようだったが、今井の行方を聞きたいと思って、
・ かかり … このようである
・ しか … 過去の助動詞「き」の已然形
・ ばや(終助詞) … 〜したい(願望)

勢田の方へぞ落ち行くほどに、今井四郎兼平も、
勢田の方面へ落ちて行くうちに、今井四郎兼平も、

八百余騎にて勢田を固めたりけるが、わづかに五十騎ばかりに討ちなされ、
八百余騎で勢田を守り固めていたが、戦いでわずか五十騎ほどに減らされ、
・ 〜に討ちなす … 攻撃して〜の状態にする

旗をば巻かせて、主のおぼつかなきに、都へ取って返すほどに、
旗を巻かせて、主君のことが気がかりなので、都へ引き返しているうちに、
・ おぼつかなし … 心配である

大津の打出の浜にて、木曽殿に行き合ひ奉る。互ひに
大津の打出の浜で、木曽殿に出あい申し上げた。お互いに
・ 奉る(謙譲の補助動詞) … 敬意:作者 ⇒ 木曽

中一町ばかりよりそれと見知つて、主従、駒を速めて寄り合うたり。
距離が一町ほどの所からそれとわかって、主従は、馬を速めて近寄り合った。

木曽殿、今井が手を取つてのたまひけるは、「義仲、
木曽殿が、今井の手を取っておっしゃったことには、「義仲は、
・ のたまふ(「言ふ」の尊敬語) … 敬意:作者 ⇒ 木曽

六条河原でいかにもなるべかりつれども、なんぢが行方の恋しさに、
六条河原で討ち死にするつもりだったが、おまえの行方を知りたいと思い、
・ いかにもなる … 死ぬ

多くの敵の中を駆け割つて、これまでは逃れたるなり。」
多くの敵の中を馬で突進し敵をうち破って、ここまで逃れてきたのだ。」

今井四郎、「御諚まことにかたじけなう候ふ。
今井四郎は、「仰せ、ほんとうにありがとうございます。
・ かたじけなし … ありがたい
・ 候ふ(丁寧の補助動詞) … 敬意:今井 ⇒ 木曽

兼平も勢田で討ち死につかまつるべう候ひつれども、
兼平も勢田で討ち死にいたしますつもりでございましたが、
・ つかまつる(「す」の丁寧語) … 敬意:今井 ⇒ 木曽
・ 候ふ(丁寧の補助動詞) … 敬意:今井 ⇒ 木曽

御行方のおぼつかなさに、これまで参つて候ふ。」とぞ申しける。
お行方が気がかりだったので、ここまで参ったのでございます。」と申した。
・ 参る(「来」の謙譲語) … 敬意:今井 ⇒ 木曽
・ 候ふ(丁寧の補助動詞) … 敬意:今井 ⇒ 木曽
・ 申す(「言ふ」の謙譲語) … 敬意:作者 ⇒ 木曽

木曽殿、「契りはいまだ朽ちせざりけり。
木曽殿は、「約束はまだ朽ちていなかったなあ。
・ ざり … 打消の助動詞「ず」の連用形

義仲が勢は敵に押し隔てられ、山林に馳せ散つて、
義仲の軍勢は敵に圧倒され分離されて、山林の中にばらばらに入って、

この辺にもあるらんぞ。なんぢが巻かせて持たせたる旗、
この辺りにもいるだろうよ。おまえが巻かせて持たせている旗を、

揚げさせよ。」とのたまへば、今井が旗を差し揚げたり。
揚げさせよ。」とおっしゃるので、今井の旗を高く揚げた。
・ のたまふ(「言ふ」の尊敬語) … 敬意:作者 ⇒ 木曽

京より落つる勢ともなく、勢田より落つる者ともなく、
京から落ちてきた軍勢なのか、勢田から落ちてきた者なのか不明確だが、

今井が旗を見つけて、三百余騎ぞ馳せ集まる。
今井の旗を見つけて、三百余騎が急いで集まる。

木曽、大きに喜びて、「この勢あらば、
木曽は、たいそう喜んで、「この兵力があれば、

などか最後のいくさせざるべき。
どうして最後の合戦をしないだろうか。
・ などか … どうして〜か(反語)
・ ざる … 打消の助動詞「ず」の連体形

ここにしぐらうて見ゆるは、誰が手やらん。」
すぐそこに密集して見えるのは、誰の軍勢だろうか。」
・ しぐらふ … 密集する
・  … 配下の軍勢
○ やらん ⇒ にやあらん
・ に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・ や … 係助詞(疑問)
・ あら … ラ行変格動詞「あり」の未然形
・ ん … 推量の助動詞「ん」の連体形

「甲斐の一条次郎殿とこそ承り候へ。」
「甲斐の一条次郎殿とうかがっております。」
・ こそ(係助詞・強調) ⇒ 結び:候へ(已然形)
・ 承る(「聞く」の謙譲語) … 敬意:今井 ⇒ 木曽
・ 候ふ(丁寧の補助動詞) … 敬意:今井 ⇒ 木曽

「勢はいくらほどあるやらん。」
「兵力はどのくらいあるのだろうか。」

「六千余騎とこそ聞こえ候へ。」
「六千余騎と耳に入っております。」
・ こそ(係助詞・強調) ⇒ 結び:候へ(已然形)
・ 候ふ(丁寧の補助動詞) … 敬意:今井 ⇒ 木曽

「さては、よい敵ござんなれ。
「それならば、十分な相手であるだろう。
・ よし … 適当である
○ ござんなれ ⇒ にこそあるなれ
・ に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・ こそ … 係助詞(強調) ⇒ 結び:なれ(已然形)
・ ある … ラ行変格動詞「あり」の連体形
・ なれ … 推定の助動詞「なり」の已然形

同じう死なば、よからう敵に駆け合うて、
どうせ死ぬならば、りっぱな相手と戦って、

大勢の中でこそ討ち死にをもせめ。」とて、真つ先にこそ進みけれ。
大軍の中で討ち死にをしよう。」と言って、真つ先に進んでいった。
・ こそ(係助詞・強調) ⇒ 結び:め(已然形)
・  … 意志の助動詞「む」の已然形
・ こそ(係助詞・強調) ⇒ 結び:けれ(已然形)






Copyright プロ家庭教師タカシ All Rights Reserved