鴻門之会・沛公虎口を脱す


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鴻門之会・沛公虎口を脱す 現代語訳・書き下し文

     [ 語句・句法 ]

・ 都尉 … 将軍の下で軍事を担当する官

・ 辞す … 別れの挨拶をする

・ 〜奈何 … 〜をどうしようか

  読み「〜いかん」(疑問)

・ 大行 … 大きな仕事

・ 細謹 … ささいな礼儀

・ 顧みる … 心にとどめる

・ 大礼 … 重大な儀式

・ 小譲 … ささいな謙譲

・ 辞せず … 責めを負わない


     [ 原文 ]

 沛公已出。項王使都尉陳平召沛公。

 沛公曰、「今者出、未辞也。為之奈何。」

 樊噲曰、「大行不顧細謹、大礼不辞小讓。

   
鴻門之会・沛公虎口を脱す 現代語訳・書き下し文

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     [ 語句・句法 ]

・ 如今 … 現在

・ 方に … ちょうど

・ 刀俎 … 庖丁とまな板

・ 何ぞ〜為さん … どうして〜するだろうか、しない(反語)

・ 遂に … そのまま

・ 令A〜 … Aに〜させる

  読み「Aヲシテ〜しム」(使役)

・ 何〜 … 何を〜か

  読み「Aヲカ〜」(疑問)

・ 操る … 持ってくる


     [ 原文 ]

 如今、人方為刀俎、我為魚肉。何辞為。」

 於是遂去。乃令張良留謝。

 良問曰、「大王来何操。」

   
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     [ 語句・句法 ]

・ 白璧一双 … 白玉の平らで丸い宝石一対

・ 玉斗 … 玉で作ったひしゃく

・ 不敢 … しいて〜しない


     [ 原文 ]

 曰、「我持白璧一双、欲献項王、

 玉斗一双、欲与亜父、会其怒、不敢献。

 公為我献之。」

 張良曰、「謹諾。」当是時、

   
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     [ 語句・句法 ]

・ 下 … 周辺

・ 覇上 … 覇水のほとり

・ 去る … 離れている

・ 車騎 … 馬車と騎兵

・ 〜従り … 〜から(起点)


     [ 原文 ]

 項王軍在鴻門下、沛公軍在霸上、

 相去四十里。

 沛公則置車騎、脱身独騎、

 与樊噲・夏侯嬰・靳彊・紀信等

 四人持剣盾歩走、

   
鴻門之会・沛公虎口を脱す 現代語訳・書き下し文

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     [ 語句・句法 ]

・ 道す … 道として通る

・ 間行す … こっそり近道を通る

・ 〜従り … 〜を通って(経由点)

・ 度る … 推量する

・ 乃ち … そこで

・ 間ぶ … ひそかに〜する


     [ 原文 ]

 従驪山下、道芷陽間行。

 沛公謂張良曰、「従此道至吾軍、

 不過二十里耳。度我至軍中、公乃入。」

 沛公已去、間至軍中。

   
鴻門之会・沛公虎口を脱す 現代語訳・書き下し文

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     [ 語句・句法 ]

・ 桮杓 … さかずきと酒をくむもの

・ 勝う … 負担や任務に対応できる

・ 辞す … 別れの挨拶をする

・ 能わず … 〜できない

・ 使A〜 … Aに〜させる

  読み「Aヲシテ〜しム」(使役)

・ 臣 … 臣下の君主に対する自称

・ 再拝す … 二度続けて礼拝する

・ 足下 … 足もと、おそば


     [ 原文 ]

 張良入謝曰、「沛公不勝桮杓、不能辞。

 謹使臣良奉白璧一双、再拝献大王足下、

 玉斗一双、再拝奉大将軍足下。」

 項王曰、

   
鴻門之会・沛公虎口を脱す 現代語訳・書き下し文

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     [ 語句・句法 ]

・ 安〜 … どこに〜か

  読み「いずクニカ〜」(疑問)

・ 督過 … 過ちをとがめる

・ 坐上 … 座席のかたわら


     [ 原文 ]

 「沛公安在。」

 良曰、「聞大王有意督過之、

 脱身独去、已至軍矣。」

 項王則受璧、置之坐上。

 亜父受玉斗、置之地、

   
鴻門之会・沛公虎口を脱す 現代語訳・書き下し文

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     [ 語句・句法 ]

・ 豎子 … 小僧、青二才(人を見下げて言う語)

・ 属 … 身内

・ 立ちどころに … 即刻、ただちに

・ 誅殺す … 罪をとがめて殺す


     [ 原文 ]

 抜剣撞而破之曰、

 「唉、豎子不足與謀。奪項王天下者、

 必沛公也。吾属今為之虜矣。」

 沛公至軍、立誅殺曹無傷。




     [ 現代語訳 ]

沛公はすでに出た。

項羽は都尉陳平に沛公を呼びに行かせた。

沛公が言うには、「今、出てくるにあたり、まだ別れの挨拶をしていない。これをどうしたらよいだろうか。」と。

樊噲が言うには、「大事を成すときには小さな慎みなど問題ではなく、重大な礼の前では小さな譲り合いにこだわりません。

今、相手はちょうど包丁とまな板で、こちらは魚や肉です。

どうして別れの挨拶などしましょうか。」と。

それでそのまま立ち去った。

そして張良を留まらせて謝罪させることにした。

張良が尋ねて言うには、「大王はおいでになるとき何をお持ちになりましたか。」と。

言うには、「私は白璧一対を持参して、項王に献上しようと思い、玉斗一対を、亜父に与えようと思っていたが、その怒りにあって、しいて献上しなかった。

あなたは私に代わってこれを献上しなさい。」と。

張良が言った、「謹んでお受けします。」と。

この時点で、項羽の軍は鴻門の辺りにあり、沛公の軍は覇水のほとりにあって、互いの距離は四十里であった。

沛公はそこで馬車と騎兵を置き、自分自身は脱け出して馬に乗って、樊噲・夏侯嬰・靳彊・紀信ら四人の剣と盾を持って徒歩で走る者と、驪山のふもとから、芷陽を通ってひそかに近道を行った。

沛公が張良に向かって言うには、「この道を通ってわが軍に至るまで、ほんの二十里にすぎない。私が軍中に到着する頃合を見計らって、あなたはそこで入りなさい。」と。

沛公はすでに去って、ひそかに軍中に到着した。

張良が入って陳謝して言うには、「沛公はこれ以上酒が飲めなくて、別れの挨拶もできませんでした。

謹んで私張良に対して、白璧一対をささげて丁寧に拝礼して大王のおそばに献上し、玉斗一対を丁寧に拝礼して大将軍のおそばにささげなさいと命じました。」と。

項王が言うには、「沛公はどこにいるのか。」と。

張良が言うには、「大王には沛公の過失をおとがめになる意志をお持ちだと聞き、脱け出して独りで帰りました。すでに軍に到着したでしょう。」と。

項王は璧を受け取って、それを座席のそばに置いた。

亜父は玉斗を受け取って、それを地上に置き、剣を抜いて突いて壊して言うには、「ああ、小僧、ともに相談するには足りない。

項王の天下を奪う者は、必ず沛公だろう。

我ら一族は今にこれの捕虜にされてしまうだろう。」と。

沛公は軍に到着して、ただちに曹無傷の罪をとがめて殺した。




     [ 書き下し文 ]

沛公已に出づ。

項王都尉陳平をして沛公を召さしむ。

沛公曰はく、「今者出づるに、未だ辞せざるなり。之を為すこと奈何。」と。

樊噲曰はく、「大行は細謹を顧みず、大礼は小讓を辞せず。如今、人は方に刀俎たり、我は魚肉たり。何ぞ辞することを為さん。」と。

是に於いて遂に去る。

乃ち張良をして留まり謝せしむ。

良問ひて曰はく、「大王来たるとき何をか操れる。」と。

曰はく、「我白璧一双を持し、項王に献ぜんと欲し、玉斗一双をば、亜父に与へんと欲せしも、其の怒りに会ひて、敢へて献ぜず。公我が為に之を献ぜよ。」と。

張良曰はく、「謹みて諾す。」と。

是の時に当たり、項王の軍は鴻門の下に在り、沛公の軍は霸上に在り、相去ること四十里なり。

沛公則ち車騎を置き、身を脱して独り騎し、樊噲・夏侯嬰・靳彊・紀信等四人の剣盾を持して歩走するものと、驪山の下より、芷陽に道して間行す。

沛公張良に謂ひて曰はく、「此の道より吾が軍に至る、二十里に過ぎざるのみ。我の軍中に至るを度り、公乃ち入れ。」と。

沛公已に去り、間びて軍中に至る。

張良入りて謝して曰はく、「沛公桮杓に勝へず、辞する能はず。

謹みて臣良をして白璧一双を奉じ、再拝して大王の足下に献じ、玉斗一双をば、再拝して大将軍の足下に奉ぜしむ。」と。

項王曰はく、「沛公安くにか在る。」と。

良曰はく、「大王之を督過するに意有りと聞き、身を脱して独り去れり。已に軍に至らん。」と。

項王則ち璧を受け、之を坐上に置く。

亜父玉斗を受け、之を地に置き、剣を抜き撞きて之を破りて曰はく、「唉、豎子与に謀るに足らず。

項王の天下を奪ふ者は、必ず沛公ならん。

吾が属今に之が虜と為らん。」と。

沛公軍に至り、立ちどころに曹無傷を誅殺す。






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