野中兼山

・ 縦書き、全漢字に読みつき、ひらがな

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 [ 現代語訳・書き下し文1 ]

野中兼山 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 致す … 至らせる

・ 無物不有 … すべての物がある

   読み「あラざルなシ」(二重否定)

・ 齎す … 持って行く

・ 蛤 … はまぐり

・ 蜊 … あさり


 [ 現代語訳・書き下し文2 ]

野中兼山・先哲叢談 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 恙無し … 平穏無事である

・ 饋る … 食物や金品を贈る

・ 異味 … 珍しい食物

・ 嘗む … 舌の先で味をみる

・ 計る … 数える

・ 漕す … 船で運ぶ


 [ 現代語訳・書き下し文3 ]

野中兼山・先哲叢談 現代語訳・書き下し文


     [ 語句・句法 ]

・ 諸卿 … 同輩を呼ぶ敬称

・ 飫く … 食べたいだけ食べる

・ 果たして … 思ったとおり

・ 生ず … 生まれる

・ 遠慮 … 遠い将来まで思慮に入れて考えること

・ 服す … 感服する




     [ 原文 ]

野中兼山土佐人。世仕国侯。

嘗来江戸、及帰期也、到書郷人曰、

「土佐無物不有。自江戸齎帰、惟有蛤蜊一艘耳。

海路幸無恙、以帰日饋之。」

衆以為嘗異味、計日待帰。

既至、則命投其所漕於城下海中、不余一箇。

衆怪問、兼山笑曰、

「此不独饋諸卿、使卿子孫亦飫之也。」

自此後、果多生蛤蜊、遂為名産。

衆始服其遠慮。


    [ 現代語訳 ]

野中兼山は土佐の人である。代々藩主に仕えた。

以前江戸にやってきて、帰る時期になり、手紙を郷里の人に送って言うには、「土佐にはどんな物でもある。

江戸から持って帰るのは、一艘の船に積んだハマグリとアサリだけである。

船旅が幸いにも平穏無事であれば、帰り着いた日にこれを贈ろうと思う。」と。

人々は珍しい食物を味わえると思い、日数を計算して帰ってくるのを待った。

到着すると命令して自分が船で運んできた物を城下の海中に投げ込ませて、一個も残さなかった。

人々は不思議に思って尋ねた。

兼山が笑って言うには、「これはただみなさんに贈るだけではなく、みなさんの子孫に十分すぎるくらい食べさせるのです。」と。

それ以後、思ったとおり多くのハマグリとアサリが生まれて、ついに名産となった。

人々は初めてその遠い将来まで思慮に入れた考えに感服した。


    [ 書き下し文 ]

野中兼山は土佐の人なり。世国侯に仕ふ。

嘗て江戸に来たり、帰期に及ぶや、書を郷人に致して曰はく、「土佐には物として有らざる無し。

江戸より齎し帰るは、惟だ蛤蜊一艘あるのみ。

海路幸ひに恙無くんば、帰日を以て之を饋らん。」と。

衆以て異味を嘗むとなし、日を計りて帰るを待つ。

既に至れば則ち命じて其の漕する所を城下の海中に投ぜしめ、一箇を余さず。

衆怪しみ問ふ。兼山笑ひて曰はく、「此れ独り諸卿に饋るのみならず、卿の子孫をして亦之に飫かしむるなり。」と。

此より後、果たして多く蛤蜊を生じ、遂に名産と為る。

衆始めて其の遠慮に服す。








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