・「もとより」は「もちろん、いうまでもなく」という意味です。
[ 例文 ]
① 岡本かの子の文章から
売品の首飾りや耳飾りが簾のように下っている軒の間から爆発したような灯が透けて
いた。その並び店の中の一軒だった。骨董品店があった。もとよりニセ物のビザンチン
石彫の破片やエトラスカの土焼皿などもあって外人相手の店には違いないが、その列ん
だ品物のなかにこの葡萄の蔓模様の鉄の取手があったのにAは心をひかれた。
② 夏目漱石の文章から
表面上にあらわれたところだけで厳重な制裁を加えるのは、かえって未来のためによ
くないかとも思われます。かつ少年血気のものであるから活気があふれて、善悪の考え
はなく、半ば無意識にこんな悪戯をやることはないとも限らん。もとより処分法は校長
のお考えにあることだから、私の容喙する限りではないが、どうかその辺りをご斟酌に
なって、なるべく寛大なお取り計らいを願いたいと思います。
|