能は歌詠み


・ 古今著聞集「能は歌詠み」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

能は歌詠み・古今著聞集 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

花園の左大臣の家に、初めて参りたりける侍の、
花園の左大臣の家に、初めて参上した侍が、
・ 参り … ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形
○ 参る … 「来」の謙譲語
・ たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

名簿の端書きに、「能は歌詠み」と書きたりけり。
新しい主人に提出する文書の端に書き添える言葉に、「才能は歌を詠むこと」と書いた。
・ 書き … カ行四段活用の動詞「書く」の連用形
・ たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

大臣、秋の始めに、南殿に出でて、
大臣が、秋の初めに、南殿に出て、
・ 出で … ダ行下二段活用の動詞「出づ」の連用形

はたおりの鳴くを愛しておはしましけるに、
はたおり虫の鳴くのを楽しんでおいでになった時、
・ 鳴く … カ行四段活用の動詞「鳴く」の連体形
・ 愛し … サ行四段活用の動詞「愛す」の連用形
○ 愛す … 楽しむ
・ おはしまし … サ行四段活用の尊敬の補助動詞「おはします」の連用形
○ おはします … 〜ていらっしゃる
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

暮れければ、
暮れたので、
・ 暮れ … ラ行下二段活用の動詞「暮る」の連用形
・ けれ … 過去の助動詞「けり」の已然形

「下格子に、人参れ。」と仰せられけるに、
「格子を下ろしに、誰か参れ。」とおっしゃったところ、

「蔵人の五位違ひて、人も候はぬ。」と申して、この侍参りたるに、
「蔵人の五位が居合わせないで、誰もおりません。」と申し上げて、この侍が参上したので、

「ただ、さらば、なんぢ下ろせ。」と仰せられければ、
「よいから、それならば、お前が下ろせ。」とおっしゃったので、

参りたるに、「なんぢは歌詠みな。」とありければ、
下ろし申し上げていると、「お前は歌詠みだったな。」とおっしゃったので、

かしこまりて、御格子下ろしさして候ふに、
恐縮して、御格子を下ろすのを途中でやめて控えていると、

「このはたおりをば聞くや。一首つかうまつれ。」と仰せられければ、
「このはたおりの鳴き声を聞いているか。一首詠み申せ。」とおっしゃったので、

「青柳の」と、初めの句を申し出だしたるを、
「青柳の」と、初句を詠みだし申し上げたのを、

候ひける女房たち、折に合はずと思ひたりげにて、笑ひ出だしたりければ、
お側にお仕えする女房たちは、季節に合わないと思った様子で、笑いだしたので、

「ものを聞き果てずして笑ふやうやある。」と仰せられて、
「もの事を最後まで聞いてしまわずに笑うということがあるか。」とおっしゃって、

「疾くつかうまつれ。」とありければ、
「早く詠み申せ。」とおっしゃったので、

  青柳のみどりの糸を繰りおきて
  青柳の緑の糸を巻きためておき

  夏へて秋ははたおりぞ鳴く
  夏の間に糸を機にかけ秋に織るという、秋の今、はたおり虫が鳴いている

と詠みたりければ、大臣、感じ給ひて、
と詠んだところ、大臣は、感動なさって、

萩織りたる御直垂を、押し出だして賜はせけり。
萩の図柄を織り出した直垂を、御簾の下から押し出してお与えなさった。

寛平の歌合に、「初雁」を、友則、
寛平の歌合の時に、「初雁」を、友則が、

  春霞かすみていにしかりがねは
  春霞にかすんで去っていった雁は

  今ぞ鳴くなる秋霧の上に
  今は鳴き声が聞こえる、秋霧の上に

と詠める、左方にてありけるに、五文字を詠みたりける時、
と詠んだ、左方であったが、五文字を詠んだ時、

右方の人、声々に笑ひけり。
右方の人は、それぞれ声を出して笑った。

さて次の句に、「かすみていにし」と言ひけるにこそ、
そうして次の句に、「かすみていにし」と言った時には、

音もせずなりにけれ。同じことにや。
声もなく静かになってしまったのだ。同じことだろうか。






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