老僧の水練


・ 古今著聞集「老僧の水練」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

老僧の水練・古今著聞集 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

いづれの頃のことにか、山僧あまた伴ひて、
いつの頃のことだったか、山門の僧が大勢連れ立って、
・ に … 断定の助動詞「なり」の連用形
○ あまた … たくさん
・ 伴ひ … ハ行四段活用の動詞「伴ふ」の連用形

児など具して、竹生島へ参りたりけり。
児(ちご)、竹生島(ちくぶじま)
稚児たちを連れて、竹生島へ参拝した。
・ 具し … サ行変格活用の動詞「具す」の連用形
☆ 具す … 引き連れる
・ 参り … ラ行四段活用の動詞「参る」の連用形
○ 参る … 参拝する(謙譲語)
・ たり … 完了の助動詞「たり」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

巡礼果てて、今は帰りなむとしける時、
島内の寺社を巡る参拝が終わって、今はもう帰ろうとしたとき、
・ 果て … タ行下二段活用の動詞「果つ」の連用形
・ 帰り … ラ行四段活用の動詞「帰る」の連用形
・ な … 完了の助動詞「ぬ」の未然形
・ む … 意志の助動詞「む」の終止形
・ し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

児ども言ふやう、「この島の僧たちは、水練を業として、
業(わざ)
稚児たちが言うには、「この島の僧たちは、遊泳の術を得意として、
・ 言ふ … ハ行四段活用の動詞「言ふ」の連体形
・ し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形


   


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おもしろきことにて侍るなる、
すばらしいものだそうですが、

いかがして見るべき。」と言ひければ、
どのようにして見たらいいのでしょうか。」と言ったので、

住僧の中へ使ひを遣りて、「小人たちの所望、かく候ふ。
寺に住む僧の所へ使いを送って、「少年たちの希望は、このようでございます。

いかが候ふべき。」と言ひ遣りたりければ、
どのようにしたらいいのでしょうか。」と言ってやったところ、

住僧の返事に、「いとやすきことにて候ふを、
寺に住む僧の返事に、「たいそう容易なことですが、

さやうのこと仕うまつる若者、ただ今、皆違ひ候ひて、
そのようなことをいたします若者が、現在、皆入れ違いに出かけていまして、

一人も候はず。返す返す口惜しきことなり。」
一人もいません。つくづく残念なことです。」

と言ひたりければ、力及ばで、おのおの帰りけり。
と言ってあったので、しかたがなくて、それぞれ帰った。

舟に乗りて、二、三町ばかり漕ぎ出でたりけるほどに、
船に乗って、二、三町ほど漕ぎ出したところ、

張衣のあざやかなるに、長絹の五条の袈裟のひた新しき懸けたる老僧、
張衣の鮮やかなものに、長絹の五条の袈裟の真新しいのを掛けている老僧で、

七十あまりもやあるらむと見ゆる、一人、
七十歳を過ぎているだろうかと見える者が、一人、

脛をかき上げて、海の面をさし歩みて来たるあり。
裾を脛の所まで引っぱり上げて、海面をしずしずと歩いてくる者がいる。

舟をとどめて、不思議のことかなと、目をすまして見居たるところに、
船を止めて、不思議なことだなあと、目に意識を集めて見つめている所に、

近く歩み寄りて言ふやう、「かたじけなく、小人たちの御使ひを賜ひて候ふ。
近くに歩いてきて言うには、「恐れ多くも、少年たちの御使者をいただきました。

折節、若者ども皆違ひ候ひて、
ちょうど今、若者たちが皆、入れ違いに出かけていまして、

御所望むなしくて御帰り候ひぬる、生涯の遺恨候ふよし、
御希望がかなわないでお帰りになさったこと、一生残る悔いであります旨、

老僧の中より申せと候ふなり。」と言ひて帰りにけり。
老僧の中から申し上げよということです。」と言って帰ってしまった。

これに過ぎたる水練の見物やあるべき。
これ以上の遊泳術の見物があるだろうか。

目を驚かしたりけり。
見て驚いたのだった。


   






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