花は盛りに


・ 徒然草「花は盛りに」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

花は盛りに・徒然草 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

花は盛りに、月は隈なきをのみ見るものかは。
隈(くま)
桜の花は盛りであるのだけを、月は曇りがないのだけを見るものだろうか。
・ 盛りに … ナリ活用の形容動詞「盛りなり」の連用形
・ 隈なき … ク活用の形容詞「隈なし」の連体形
○ 隈なし … 暗い所がない
・ 見る … マ行上一段活用の動詞「見る」の連体形

雨に向かひて月を恋ひ、垂れこめて
雨に向かって月を恋い慕い、簾を垂れて家に引きこもって
・ 向かひ … ハ行四段活用の動詞「向かふ」の連用形
・ 恋ひ … ハ行四段活用の動詞「恋ふ」の連用形
・ 垂れこめ … マ行下二段活用の動詞「垂れこむ」の連用形
○ 垂れこむ … 簾などを下ろして部屋の中に閉じこもる

春の行方知らぬも、なほあはれに情け深し。
春が過ぎてゆくのを知らないのも、やはりしみじみと趣深い。
・ 知ら … ラ行四段活用の動詞「知る」の未然形
・ ぬ … 打消の助動詞「ず」の連体形
・ あはれに … ナリ活用の形容動詞「あはれなり」の連用形
☆ あはれなり … しみじみと心に深く感じる
・ 深し … ク活用の形容詞「深し」の終止形

咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ、見どころ多けれ。
梢(こずえ)
今にも咲きそうな梢、散りしおれている庭などこそ、見るべきところが多い。
・ 咲き … カ行四段活用の動詞「咲く」の連用形
・ ぬ … 強意の助動詞「ぬ」の終止形
・ べき … 推量の助動詞「べし」の連体形
・ 散りしをれ … ラ行下二段活用の動詞「散りしをる」の連用形
・ たる … 存続の助動詞「たり」の連体形
○ こそ(係助詞・強調) ⇒ 結び:多けれ()
・ 多けれ … ク活用の形容詞「多し」の已然形


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歌の詞書にも、「花見にまかれりけるに、早く散り過ぎにければ。」とも、
和歌の詞書にも、「花見に出かけたが、すでに散ってしまっていたので。」とも、

「障ることありてまからで。」なども書けるは、
「さしつかえることがあって、出かけないで。」などとも書いてあるのは、

「花を見て。」と言へるに劣れることかは。
「花を見て。」と言ってあるのに劣っているだろうか。

花の散り、月の傾くを慕ふ習ひはさることなれど、
花が散り、月が傾くのを惜しむ慕う習慣はもっともなことだが、

ことにかたくななる人ぞ、「この枝、かの枝散りにけり。
とくに情趣を解さない人が、「この枝も、あの枝も散ってしまった。

今は見どころなし。」などは言ふめる。
今はもう見る価値がない。」などと言うようだ。

よろづのことも、始め終はりこそをかしけれ。
何事も、始めと終わりこそ、情趣がある。

男女の情けも、ひとへに逢ひ見るをばいふものかは。
男女の情愛も、ただ逢って契りを結ぶことだけをいうのだろうか。

逢はでやみにし憂さを思ひ、あだなる契りをかこち、
逢って契りを結ばないで終ったつらさを思い、はかない約束を怨み嘆き、

長き夜をひとり明かし、遠き雲居を思ひやり、
長い夜をひとり明かし、遠く離れた所にいる人を思いやり、

浅茅が宿に昔をしのぶこそ、色好むとはいはめ。
茅の生えた荒れた家で昔をしのぶのを、恋の情趣がわかるというのだろう。

望月の隈なきを千里の外まで眺めたるよりも、
満月で曇りのない月をはるか彼方まで眺めているよりも、

暁近くなりて待ち出でたるが、いと心深う、
明け方近くなって持って出合った月のほうが、とても趣深く、

青みたるやうにて、深き山の杉の梢に見えたる、木の間の影、
青みを帯びているようで、深い山の杉の梢に見えている、木々の間の月の光、

うちしぐれたる群雲隠れのほど、またなくあはれなり。
時雨を降らせた群雲に隠れている様子は、またとなく情趣が深い。

椎柴、白樫などの、濡れたるやうなる葉の上にきらめきたるこそ、
椎の木や白樫などの濡れているような葉の上にきらめいている情景は、

身にしみて、心あらん友もがなと、都恋しう覚ゆれ。
心に深く感じられて、情趣を解する友がいればなあと、都が恋しく思われる。

すべて、月・花をば、さのみ目にて見るものかは。
すべて、月や花を、そのように目でばかり見るものだろうか。

春は家を立ち去らでも、月の夜は閨のうちながらも思へるこそ、
春は家から出かけなくても、月の夜は寝室の中にいるままで思っているのこそ、

いと頼もしう、をかしけれ。
とても楽しみで、情趣が深い。

よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、
身分・教養のある人は、ひたすら風流にふける様子にも見えず、

興ずるさまもなほざりなり。
おもしろがる様子もあっさりしている。

片田舎の人こそ、色濃くよろづはもて興ずれ。
片田舎の人こそ、しつこく何事にも興味を持つ。

花のもとには、ねぢ寄り立ち寄り、あからめもせずまもりて、
花の下には、身をねじるように近寄り、わき目もふらずに見つめて、

酒飲み、連歌して、果ては、大きなる枝、心なく折り取りぬ。
酒を飲み、連歌して、しまいには、大きな枝を思慮なく折り取る。

泉には手足さし浸して、雪には下り立ちて跡つけなど、
泉には手足をつけて、雪の上には降り立って足跡をつけるなど、

よろづのもの、よそながら見ることなし。
すべての物を距離を置いて見ることがない。






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