月やあらぬ


・ 伊勢物語「月やあらぬ」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

月やあらぬ・伊勢物語 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

昔、東の五条に、
東(ひむがし)
昔、東の京の五条に、

大后の宮おはしましける西の対に、住む人ありけり。
大后(おおきさい)、対(たい)
皇太后がおいでになったお屋敷の西の対に、住む女性がいた。
・ おはしまし … サ行四段活用の動詞「おはします」の連用形
○ おはします … 「いる」の尊敬語
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・ 住む … マ行四段活用の動詞「住む」の連体形
・ あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

それを、本意にはあらで、
本意(ほい)
その人を、思うように会うこともできなかったが、
○ 本意 … 本来の意志
・ に … 断定の助動詞「なり」の連用形
・ あら … ラ行変格活用の動詞「あり」の未然形

心ざし深かりける人、行きとぶらひけるを、
思う心の深かった人が、訪れていたのだが、
○ 心ざし … 好意
・ 深かり … ク活用の形容詞「深し」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
・ 行きとぶらひ … ハ行四段活用の動詞「行きとぶらふ」の連用形
○ とぶらふ … 訪問する
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

正月の十日ばかりのほどに、ほかに隠れにけり。
正月十日ばかりの頃に、よそに姿を隠してしまった。
・ 隠れ … ラ行下二段活用の動詞「隠る」の連用形
・ に … 完了の助動詞「ぬ」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形


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あり所は聞けど、人の行き通ふべき所にもあらざりければ、
居る場所は聞いたが、普通の人が行き通うことのできる所ではなかったので、

なほ憂しと思ひつつなむありける。
たいそうつらいと思いながら過ごしていた。

またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋ひて行きて、
翌年の正月に、梅の花盛りの頃に、去年を恋しく思って行って、

かの西の対に行きて、立ちて見、ゐて見、
あの西の対に行って、立って見たり、座って見たりして、

見れど、去年に似るべくもあらず。
見るけれども、去年に似ているはずもない。

うち泣きて、あばらなる板敷に、月の傾くまで伏せりて、
泣いて、がらんとした板敷に、月が西の方に傾く頃まで横になっていて、

去年を思ひ出でて詠める。
去年を思い出して詠んだ。

  月やあらぬ春や昔の春ならぬ
  月は昔のままの月ではないのか、春は昔のままの春ではないのか、

  わが身ひとつはもとの身にして
  私の身だけはもとのままなのに。

と詠みて、夜のほのぼのと明くるに、泣く泣く帰りにけり。
と詠んで、夜がほのぼのと明ける頃に、泣く泣く帰ったのだった。






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