数寄の楽人


・ 発心集「数寄の楽人」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

数寄の楽人・発心集 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

中ごろ、市正時光といふ笙吹きありけり。
市正(いちのかみ)、笙(しょう)
そう遠くない昔、市正時光という笙の演奏家がいた。
・ いふ … ハ行四段活用の動詞「いふ」の連体形
・ あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

茂光といふ篳篥師と囲碁を打ちて、同じ声に裹頭楽を唱歌にしけるが、
篳篥(ひちりき)、裹頭楽(かとうらく)、唱歌(しょうが)
茂光という篳篥の演奏家と囲碁を打って、声を合わせて裹頭楽の旋律を口で唱えていたが、
・ いふ … ハ行四段活用の動詞「いふ」の連体形
・ 打ち … タ行四段活用の動詞「打つ」の連用形
・ 同じ … シク活用の形容詞「同じ」の連体形
・ し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

おもしろくおぼえけるほどに、内よりとみのことにて時光を召しけり。
楽しく思われていたところ、帝から急な用事で、時光をお呼び寄せになった。
・ おもしろく … ク活用の形容詞「おもしろし」の連用形
☆ おもしろし … (基本)心が明るく楽しい
             (文脈)楽しい
・ おぼえ … ヤ行下二段活用の動詞「おぼゆ」の連用形
☆ おぼゆ … (基本)自然に〜と思われる
           (文脈)思われる
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形
○ とみ … 急なこと
・ 召し … サ行四段活用の動詞「召す」の連用形
○ 召す … お呼び寄せになる(尊敬語)
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形


   


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御使ひ至りて、このよしを言ふに、いかにも、耳にも聞き入れず、
ご使者が到着して、この旨を言うが、どうしても、耳にも聞き入れず、

ただもろともに揺るぎ合ひて、ともかくも申さざりければ、
ひたすら一緒に体を揺り動かし合って、なんとも申さなかったので、

御使ひ、帰り参りて、このよしをありのままにぞ申す。
ご使者は、帰って参って、このいきさつをありのままに申し上げる。

いかなる御戒めかあらむと思ふほどに、
どのようなご処罰があるだろうかと思っていると、

「いとあはれなる者どもかな。さほどに楽に愛でて、
「たいそうすばらしい者たちだな。それほどに音楽に夢中になって、

何ごとも忘るばかり思ふらむこそ、いとやむごとなけれ。
何事も忘れるくらい思っているというのは、とても尊ぶべきことだ。

王位は口惜しきものなりけり。行きてもえ聞かぬこと。」とて、
王位とは残念なものだなあ。行って聞くこともできないことよ。」とおっしゃって、

涙ぐみ給へりければ、思ひのほかになむありける。
涙ぐみなさったので、思いがけないことだった。

これらを思へば、この世のこと思ひ捨てむことも、
この者たちのことを思うと、この世への思いを断ち切ることに対しても、

数寄はことにたよりとなりぬべし。
好きな道に没入することは、とくに頼りになるに違いない。


   






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