鹿の声


・ 大和物語「鹿の声」の現代語訳と品詞分解です。現代語訳と品詞分解を並べて記載しています。

・ 500個ほど有るといわれている重要語句はカラーで表示しています。150個ほど有るといわれている最重要語句には印を付けています。

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       [ 現代語訳・品詞分解・原文 ]

鹿の声・大和物語 現代語訳・品詞分解・原文


       [ 詳しい解説 ]

大和の国に、男女ありけり。
大和の国に、男と女がいた。
・ あり … ラ行変格活用の動詞「あり」の連用形
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

年月かぎりなく思ひて住みけるを、
長い年月この上もなく思って暮らしていたが、
・ かぎりなく … ク活用の形容詞「かぎりなし」の連用形
○ かぎりなし … 最も優れている
・ 思ひ … ハ行四段活用の動詞「思ふ」の連用形
・ 住み … マ行四段活用の動詞「住む」の連用形
・ ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

いかがしけむ、女を得てけり。
どうしたことか、男は別に女をつくってしまった。
☆ いかが … どのように〜か(疑問)
・ し … サ行変格活用の動詞「す」の連用形
・ けむ … 過去推量の助動詞「けむ」の連体形
・ 得 … ア行下二段活用の動詞「得(う)」の連用形
○ 得 … 自分のものにする
・ けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

なほもあらず、この家に率て来て、
それだけではすまされず、この家に連れて来て、
・ あら … ラ行変格活用の動詞「あり」の未然形
・ ず … 打消の助動詞「ず」の連用形
・ 率 … ワ行上一段活用の動詞「率る」の連用形
・ 来 … カ行変格活用の動詞「来(く)」の連用形

壁をへだててすゑて、わが方にはさらに寄り来ず。
壁を隔てて住まわせ、自分の方にはまったく寄りつかない。
・ へだて … タ行下二段活用の動詞「へだつ」の連用形
・ すゑ … ワ行下二段活用の動詞「すう」の連用形
○ すう … 妻として住まわせる
☆ さらに(〜打消) … まったく(〜ない)
・ 寄り来 … カ行変格活用の動詞「寄り来」の未然形
・ ず … 打消の助動詞「ず」の終止形


   


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いと憂しと思へど、さらに言ひもねたまず。
たいそうつらいと思ったが、まったく言ったり恨んだりしない。

秋の夜の長きに、目をさまして聞けば、鹿なむ鳴きける。
秋の夜は長いので、目を覚まして聞くと、鹿が鳴いていた。

ものも言はで聞きけり。
ものも言わずに聞いていた。

壁をへだてたる男、「聞きたまふや、西こそ。」と言ひければ、
壁を隔てている男が、「お聞きですか、西隣さん。」と言ったので、

「何ごと。」と答へければ、
「何を。」と答えたところ、

「この鹿の鳴くは聞きたうぶや。」と言ひければ、
「この鹿の鳴いているのは、お聞きですか。」と言ったので、

「さ聞きはべり。」と答へけり。
「そう聞いています。」と答えた。

男、「さて、それをばいかが聞きたまふ。」と言ひければ、
男が、「それで、それをどのようにお聞きですか。」と言ったので、

女、ふと答へけり。
女はさっと答えた。

われもしかなきてぞ人に恋ひられし
  私もかって、鹿が鳴くように泣いて、あなたに恋い慕われました。

  今こそよそに声をのみ聞け
  今ではよそで、あなたの声を聞くだけです。

とよみたりければ、かぎりなくめでて、
と詠んだので、この上なく心をうたれて、

この今の妻をば送りて、もとのごとなむ住みわたりける。
この今の妻を送り返して、もとのように暮らし続けた。


   






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